コメント|ドキュメンタリー映画『ドコニモイケナイ』

キース・リチャーズは 『ロックはあるけど、ロールはどうした?』 と言った。
2001年、渋谷でロックしていた彼女は、病院でも、作業所でも、母親の前でも、ロールし続けている。
葛藤している人間が、僕は好きだ。

お笑いタレント ハウス加賀谷 (松本ハウス)

学歴も才能もないひとりの女性が、コミュニケーションを渇望して街角で思いを発し続ける── 『ドコニモイケナイ』 は、“クリエイター症候群” に感染した詩人やミュージシャンなどがストリートにあふれたゼロ年代前半の情景を切り撮っている。この映画が誠実なのは、彼女の過酷な “その後” をも写していることだ。

ライター/リサーチャー 松谷創一郎

子どものようにまっすぐな目をした女の子に魅了され、「 取材 」 名目でぐんぐん踏み込む日本映画学校の若者たち。9年後に撮影を再開したとき、見えてきたのは彼女の変化だけではなかった。偶然と衝動、思索と時間。傑作というのと違うけれど、ドキュメンタリーの魅力を詰め込んだ映画です。

山形国際ドキュメンタリー映画祭 東京事務局ディレクター 藤岡朝子

『ドコニモイケナイ』 は、「地方」 と 「中央」、「虚飾」 と 「現実」、「豊かさ」 と 「貧しさ」、そういったものの狭間で、消費することを最高の是とするわたしたちの社会のことを、また、わたしたち自身のことを静かに批評しているように感じます。
妃里さんの 「ひとりごと」 のような歌が、ささやかな、時代への、社会への抵抗として、むなしく切なく、僕の心に突き刺さりました。

映画監督 刀川和也 ― 『隣る人』

人々を勇気づけるほどにまっすぐ輝いていたたましいが、その奥底で、痛ましいまでに繊細なもろさを抱え込んでいたとは。
せつない、そして、いたたまれない現実を突きつけられた。
しかし、そのたましいは、燃え尽きたわけでも、闇に呑み込まれてしまったわけでもなかった。
時を経て、母親とのぬくもりある暮らしの中で、少しずつ、輝きがまた育ちつつあるのを垣間見た。
祈りにも似た希望を胸に、妃里さんをずっとこれからも見守っていければと願う。
どこにいけなくても、今ここでの明日を信じることはできるのだから。

シルバーリボンジャパン顧問/東洋大学ライフデザイン学部教授 稲沢公一

頭がおかしくなった吉村さんの背中を撮る監督の震えと、
涙で顔をぐしゃぐしゃにする9年後の吉村さんと対峙する監督の決意に、
空白の時間がただの空白じゃなかったことを感じました。
大好きな映画です。言葉にしたくない思いがいくつもありました。

映画監督 岩淵弘樹 ― 『遭難フリーター』 『サンタクロースをつかまえて』

2001年、渋谷の路上で夢を歌う少女は、夢に破れて墜落する。島田隆一監督の映画 『ドコニモイケナイ』 は、都市を彷徨する出口なしの世代の魂の記録だ。10年間のジャンプ、それは空白のゼロ年代の意味を問う。夢と現実、都市と地方、時代と刹那…… 鋭い緊張関係がこの傑作ドキュメンタリーを生んだ!

作家 中森明夫

居場所を求めて探しあてた少女たちは、どこか人を寄せ付けないパワーがある。刹那的だけど潔くて、嫉妬さえ感じることもある。
一瞬だから、輝く時間。その頃の輝きも面影も、何かのきっかけで消えてしまう少女たちもいる。
「ドコニモイケナイ…」 の主人公もその一人かも知れない。
彼女が体調を崩し、故郷へと帰って行くシーン。何かを諦めたような、これからの自分を悟ったように、人形のような表情で去っていく後ろ姿。
哀しくて切なくて、残酷で、でもこれが現実なんだと思い知った。

生きていくとは、リアルとはこういうことなんだ。

VOICES マガジン編集長 橘ジュン

何が幸せかを自分で決めるのは、自由であり、権利だけど、
同時にとても怖いことなんだ。
それは大事な人を悲しませることにもつながりかねないから。
それでも、自分の幸せを自分で決めることによってしか、
自分の人生や確かな居場所が始まらないとしたら…
自分らしく生きることの恍惚と不安に、誰もが揺れている。

フリーライター&エディター 今一生

人の心とはなんだろう?。
人の心は何を求めているのだろう?。
痛ましく、美しい魂の10年間の記録。

映画監督 橋口亮輔 ― 『二十歳の微熱』 『渚のシンドバッド』 『ハッシュ!』 『ぐるりのこと』

映画 『ドコニモイケナイ』 は 「何処にも行けない」 感に怯える人と時代へのアンサームービーである。「何処にでも行ける」 個のディティールとしての静かな佇まいを、爽やかな風が囲んでいる。

映画監督/プロデューサー 大宮浩一 ――― 『無常素描』 『季節、めぐり それぞれの居場所』

渋谷がいちばん危い魅力を発散していた時期の、その闇の中の輝きを探った記録である。夢と希望と、そして苛烈な人生の問題がここにある。厳しい映画だ。

映画評論家 佐藤忠男

(photo)

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